耐熱塗装事例 GTRエンジン部品

GTRエンジン部品耐熱塗装~GT-R耐熱塗装にまつわること~

耐熱塗装の引き合いが以下の条件で舞い込みました。

「32か所のネジ締めする切削加工面とカバー取り付け面2面、製品全体の裏面すべてを塗装カブリNGであること。」
「常時140℃の温度がかかる部品なので、その温度に耐えうる塗膜であること。そして、その塗色は製品上部に取り付けられる樹脂製のカバーであること。」

上記のスペックを満たすため、当社では以下のような製造工程を経て実現するに至りました。当時のマスキング作業の状況は、マスキングテープを任意の形にカットして納入してくれる業者さんにお願いして、マスキングを行っていました。その会社は、耐熱テープにも対応しており、当社の焼付塗装には非常に助かるものとなっています。
 
ちなみに、耐熱テープは何が耐熱かというと、本体の紙ではありません。通常のテープは、温度がかかると製品に対し、ベタベタした糊残りを起こしてしまいます。この、糊の部分が、温度がかかっても糊残りしないことが耐熱テープなのです。
 
試作段階では、とりあえずその耐熱テープを切り取って行っていましたが、それでは1個の製造原価が上がってしまいます。そこで注目したのが、シリコン素材です。
 
シリコン素材は、それ自体が200℃の耐熱性を持っており、柔らかい素材で加工も簡単で、また焼付した塗装に対しての密着性がないので繰り返し使用が可能である。マスキング用の素材としては非常に有効です。
そこで、通常ゴム栓を発注している業者に相談し、抜型制作からいろいろと段取りをしてもらいました。
そして出来上がったのがこれです。

円錐形をしているシリコン栓と、切削加工面に合わせて抜いた丸シリコンを合わせて1セットとし、これでマスキングをすることになりました。
裏面の大きな面は、シリコンシートを使用し、アルミで加工した背板にネジ締めで貼り付け、製品を固定することで、マスキングを行いました。

これと同時に、当社では製造全体数の6割が耐熱塗料を塗布した製品を製造しており、エンジン点火すると、温度の上昇するエンジンにかかわる製品の塗装を行っています。製品としては、マフラを中心に行っており、実際の走行中の車のマフラの温度は300℃まで上昇します。その温度でも耐えうる耐熱の塗膜は、塗料メーカーの仕様書では600℃まで耐えうる設定になっています。

今回のGT-R部品ではそこまでの耐熱性が必要ないので、300℃まで耐えうる設定で、塗料メーカーに作ってもらいました。しかも、客先要望に合わせて色を調色しなければならなかったので、(600℃耐熱での調色は光沢を出せなかったりと意匠性を有した塗膜を形成することは難しく、あくまでも耐熱性という機能を持った塗膜であるという理解をしていただきたい)
300℃の耐熱塗料であれば、グロスのコントロール(光沢度)、色の調色など、かなりの幅で対応することができます(赤色は耐熱調色が難しく、指定の1色しかできません)。
これらの問題点をクリアし、このような状況で塗装することとなりました。
 
塗装不要面に関しては、アルミ製のカバーにて覆ってしまい、マスキング工数を低減し、このような状況で塗装を行う形になりました。